働く社員のモチベーションは、企業の成長や業績に大きく影響します。モチベーションが高い社員は、仕事に対する意欲や創造力が高まり、結果的に企業の競争力を高めることにつながります。しかし、モチベーションを向上させる方法は一筋縄ではいかないものです。そこで今回は、社員のモチベーションを向上させる方法をご紹介します。
目標設定と評価制度の見直し
社員のモチベーションを向上させるためには、まず目標設定と評価制度を見直すことが重要です。目標設定は、社員が自分の仕事に対する意義や達成感を感じるために必要です。また、評価制度は、社員が自分の成果を正当に評価されることで、モチベーションが高まります。目標設定と評価制度を適切に設定し、社員が自分の仕事に対する意義や達成感を感じられる環境を整えましょう。具体的には、SMART原則に基づく目標設定や、定期的な評価面談の実施が効果的です。
より効果的に見直しを行うためには、社員一人ひとりのパーパスに基づいた目標を立てることが効果的です。パーパスは、自分で決めて、自分で目指す人生目標と言えるものです。人生目標に向かって目標を立てられれば、必然的にモチベーションが向上します。また、目標は自己効力感が感じられる高さに設定するとさらに効果的です。高すぎる目標や低すぎる目標はモチベーションを低下させます。目標は自らがチャレンジしたいと思える高さに設定すべきです。
コミュニケーションの向上
社員同士、また上司と部下のコミュニケーションが円滑であることも、モチベーション向上には欠かせません。コミュニケーションがスムーズであれば、社員は自分の意見やアイデアを自由に発表でき、チームでの協力も円滑に進みます。また、上司と部下のコミュニケーションが良好であれば、部下は上司からの評価やフィードバックを適切に受け取ることができ、自分の成長につなげることができます。コミュニケーションの向上には、定期的なミーティングや社内イベントの開催、オープンなオフィス環境の整備などが有効です。さらに、リモートワークが増える中で、オンライン上でのコミュニケーションツールの活用も重要です。
繰り返しになりますが、大切なことなので再度お伝えします。よく勘違いされがちですが、ビジネス会話とコミュニケーションは別々に考える必要があります。ビジネス会話が円滑にできていても、それだけではコミュニケーションが向上しているとは言えません。ここで言うコミュニケーションは、何気ない会話や互いの人柄がわかるような会話のことを指しています。互いの人柄がわかると信頼関係が構築され、組織の風通しが良くなり、社員が自分の意見やアイデアを発信しやすくなります。
社員の成長支援
社員が自分の成長を実感できる環境を整えることも、モチベーション向上には重要です。社員の成長支援には、研修や勉強会の開催、資格取得支援、キャリアアップ支援などがあります。また、社員が自分の強みや興味を活かせる仕事を任せることも、モチベーション向上につながります。社員が自分の成長を実感できるよう、様々な支援を行いましょう。例えば、社内でのメンター制度の導入や、外部講師を招いての研修プログラムの実施が効果的です。
成長を支援するということは、会社の方針に従って教育を受けさせることだけではありません。支援とは、社員の将来像を受容・肯定し、将来像に向かって成長しようとする行動に対して背中を押すことを言います。社員が興味を持った役割や仕事に対して、適切な配慮をする必要があります。これにより、社員のモチベーションが向上し、自ら成長する習慣が身につきます。
労働環境の改善
働く環境が快適であることも、社員のモチベーション向上には大切です。労働環境の改善には、オフィスの清潔さや快適さを保つこと、休憩スペースの整備、福利厚生の充実などがあります。また、労働時間の適切な管理や柔軟な働き方の導入も、社員のストレス軽減につながります。労働環境を整えることで、社員の仕事への意欲や集中力が高まります。具体的には、オフィス内の照明や空調の最適化、リフレッシュできる休憩スペースの提供、テレワークやフレックスタイム制度の導入が効果的です。
労働環境という単語を使用していますが、「会社が社員に対し多くの選択肢を提供する」と考えるとわかりやすいです。仕事の息抜きは人によって様々な方法があります。すべては提供できないですが、窓際でコーヒーを飲む以外の選択肢も準備すべきです。前述の通り、働き方についてもコロナ禍を乗り越えた今、様々な選択肢が提供されるようになりました。継続して利用できる環境を提供すべきです。
もう一つ大切なことは、誰でもその選択肢を自由に選択できるようにすることです。制度的なことだけではありません。職場の雰囲気を含めて、自由に選択できるようにする必要があります。選択に対して、会社はメリット・デメリットを説明する義務を負いますが、選択に対して会社は意見してはいけません。これは、選択した責任を選択した本人に持たせるためです。責任を本人に持たせることは、自律を促すだけでなく、エンゲージメント向上にも良い影響を与えます。
社員の声を聞く
社員のモチベーション向上には、社員の声を聞くことが大切です。社員が抱える悩みや不満、要望を聞くことで、企業は適切な対策を講じることができます。社員の声を聞くためには、定期的な面談やアンケート調査、意見箱の設置などが有効です。社員の声を大切にし、企業全体で改善に取り組むことで、社員のモチベーション向上につながります。また、社員が自分の意見が反映されることを実感できるよう、改善策の実施状況を定期的に報告することも重要です。
しかし、何でもかんでも社員の声を聞いて解決しまうと、すべて会社に言えば解決してくれると勘違いしてしまうことがあります。社員たちで考えて改善すべき内容の場合は、社内でワークグループを立ち上げて解決に向けて検討してもらう必要があります。会社でないと解決できない内容は会社で引き取り、会社として解決すべきです。社員でも会社でも解決できない内容の場合は、意見をあげてくれた社員に丁寧に説明し納得してもらいます。このように、適切な対応を行うことで、社員が声を上げやすい環境を維持しつつ、効果的な改善策を実施できます。
社員の実績を称える
社員のモチベーションを向上させるためには、彼らの実績を称えることも大切です。社員が自分の努力や成果が認められることで、自信や達成感が生まれ、さらなる成長への意欲が高まります。社員の実績を称える方法としては、社内表彰制度の導入や、成果を共有する場の設け方が考えられます。また、上司が率先して部下の成果を評価し、適切なフィードバックを行うことも重要です。
称えるときに注意すべき点が１つあります。それは「褒める」と「感謝」の違いを正しく理解することです。「褒める」という行為は、褒める人と褒められる人との間にヒエラルキーを発生させます。ヒエラルキーは承認欲求を満たしますが、承認欲求への依存を生み出します。承認欲求は相手に褒められることを思考の中心に置くため、自分自身を見失い成長を阻害することがあります。
承認欲求と比べて、「感謝」はヒエラルキーを逆転させる効果があります。承認欲求を満たすことはないですが、感謝された人は素直に受け止めやすくなります。また、褒められた人の「貢献欲求」をくすぐるので、視座の向上が促進され、自己実現欲求への移行がスムーズになります。
チームビルディング活動の実施
チームビルディング活動を通じて、社員同士の信頼関係を築くことも、モチベーション向上に効果的です。チームビルディング活動には、社内イベントや研修、チームでの懇親会などがあります。これらの活動を通じて、社員同士が互いに理解し合い、協力し合う関係を築くことができます。チームビルディング活動を定期的に実施し、社員のつながりを強化しましょう。
チームビルディングにも様々な手法があります。今置かれている状況に合わせて、適切なチームビルディングの施策を行う必要があります。例えば、仕事から離れて各々の素顔が知りたいのであれば、雑談がすすむ懇親会などが効果的でしょう。また、ある問題を主体的に解決してほしいのであれば、ワークショップで対話を繰り返し自分たちで解決する方法を導き出すのが効果的です。
社員の働きがいを追求する
社員が働く上での働きがいを追求することも、モチベーション向上に繋がります。働きがいを感じることで、社員は仕事に対する意欲ややりがいを持ち続けることができます。働きがいを追求するためには、社員一人ひとりの価値観や目標を理解し、それに沿った働き方やキャリアパスを提供することが重要です。また、企業のビジョンや目標を明確にし、社員が自分の仕事が企業の成長に貢献していることを実感できるようにすることも大切です。
大切なのは、社員の働きがいは一人ひとり異なるということです。社員に「あるべき働きがい」を押し付けると、目に見えてモチベーションは低下していきます。「人それぞれ異なる働きがいを後押しすると組織のまとまりが無くなるのではないか？」と考える人が未だに多くいるようです。全くの逆で、一人ひとりの働きがいを後押しすることで信頼関係が生まれ、組織としてのまとまりが強化されます。
社員の健康をサポートする
社員の健康をサポートすることも、モチベーション向上に役立ちます。健康な社員は、仕事に対する集中力やパフォーマンスが高まります。社員の健康をサポートするためには、ストレスマネジメント研修の実施や、健康診断の充実、運動やリラクゼーション施設の提供などが考えられます。また、メンタルヘルス対策として、カウンセリングや心理療法のサポートも重要です。
日本においては、健康を害してまで会社に尽くすことが美談とされている傾向がまだまだ強く残っていますが、それは明らかに間違っています。単純に考えて、すべての社員が健康で、最大のパフォーマンスを発揮している方が、会社にとって有益です。会社から社員に健康を押し付ける必要はないと思いますが、会社全体が健康を推進している雰囲気や風土づくりは、社員の幸福感に良い影響を与えます。
社員のワークライフバランスを重視する
社員のワークライフバランスを重視することも、モチベーション向上に繋がります。仕事とプライベートのバランスが取れた状態で働くことができれば、社員はストレスを軽減し、仕事に対する意欲を持続させることができます。ワークライフバランスを重視するためには、労働時間の適切な管理や、有給休暇の取得促進、育児や介護休暇制度の充実などが必要です。
ワークライフバランスを取るときに注意すべき点は、「働いている時間が短い人がバランスが取れている」という先入観にとらわれないようにすることです。人によってバランスが取れた働き方は異なります。働いている時間が長い人・短い人の双方にバランスが取れているか確認し、適切なサポートをする必要があります。このような柔軟な対応が、社員一人ひとりの働きがいや生産性の向上に繋がり、結果として企業全体の成長にも寄与します。
まとめ
社員のモチベーション向上には、目標設定と評価制度の見直し、コミュニケーションの向上、社員の成長支援、労働環境の改善、社員の声を聞くこと、社員の実績を称えること、チームビルディング活動の実施、社員の働きがいを追求すること、社員の健康をサポートすること、社員のワークライフバランスを重視することが重要です。これらの方法を実践し、社員が働きやすい環境を整えることで、社員のモチベーションを向上させることができます。
