フラットな関係

前のブログでも書いたんだけど、今の想いで書き直してみようかと思います。それも、前のブログで何を書いたのかは見ずに書きます(見てしまうと絶対に影響されてしまうので)。

ヒエラルキーの存在

人と人の間には必ずと言っていいほどヒエラルキーが存在します。むしろ、ヒエラルキーのない人間関係は無いと言い切っても良いくらいです。逆に関係のない会話もしたことのない見たこともない他人には、ヒエラルキーは無いのかもしれません。しかし、「全くの他人」は今回のテーマにそぐわないので対象外にします。

人は何故ヒエラルキーを感じるのでしょうか?細かいことを言えば色々と理由はあるのでしょうが、突き詰めれば「人間関係を楽にしたい」という想いに集約されます。さらに突き詰めると「自らの子孫を残したい」と言う本能につながるかと思いますが、それでは「仕方がない」で話が終わってしまいますのでやめておきます。

多くの人は良い人間関係を望んでいます。「一人の方が良い」と今思っている人であっても、それは人間関係の結果であって過去に「良い人間関係」を望んでいたはずです。「良い人間関係」とはどのような関係でしょうか?真っ先に思いつくのは「気を使わなくて良い」と言う事ではないでしょうか。

でもよく考えてください。「気を使わなくて良い」とお互いに思っているでしょうか。もしかしたら、自分自身が一方的に思っているだけかもしれません。相手に確認すれば良いと思われるかもしれませんがちょっと待ってください。相手に確認して本当の答えは得られるでしょうか?「気を使っていない」と言われれば、気を使って言っているかもしれません。「気を使っている」と言われれば、気を遣わず言ったかもしれませんが気を使っていると言っています。そういう意味で「お互いに気を使わない関係」という関係は存在しないのです。

では自分に意識を向けてみましょう。「気を使っている」と言う事は、ヒエラルキー的には相手が「同位に無い」と考えられます。相手が上位にある場合は、相手の機嫌を損ねないように気を遣うでしょう。相手が下位の場合は、相手の気分を害さないように気を使います。「気を使わない」場合は、ヒエラルキー的に相手が下位にあると考えられます。相手が下位にあれば、気を遣う必要はないですよね。

つまり、ヒエラルキーの無い人間関係は存在しないのです。

フラットな関係とは

「ヒエラルキーの無い人間関係は存在しない」状態において、「フラットな関係」は存在するのでしょうか?結論から言えば存在しません。しかし、「できる限りヒエラルキーを感じさせないようにする」ことは可能です。世間一般ではこれを「フラットな関係」と呼んでいます。

前節では自分に意識を向けていました。しかし、「フラットな関係」では「感じさせない」と言う表現の通り、意識を他者に向ける必要があります。これが、フラットな関係の第一歩となります。「自分がヒエラルキーを感じない」関係を他者にするのではなく、「他者がヒエラルキーを感じない」関係をするのです。この両者は似ているようで大きく異なります。

「自分がヒエラルキーを感じない」関係の持ち方はパターン化できます。何しろ、自分が感じることが基になっているのですから、自分が何をもってヒエラルキーを感じるのかを整理すれば良いのです。しかし、自分がヒエラルキーを感じないからと言って、他者がヒエラルキーを感じないとは限りません。自分がヒエラルキーを感じない関係の持ち方は、人によって異なるたくさんのヒエラルキーを感じない関係性の1つであることを自覚することが必要です。

「人によって異なるたくさんのヒエラルキーを感じない関係性」を持つことは可能なのでしょうか?これを解決する方法は、現実的/非現実的を考えなければ、いくつかの方法があります。

まず一つ目は、「相手によって関係性の持ち方を変える」と言う事です。相手によって一人ひとり、言葉遣い表現、身振り手振り、姿勢、態度などを、ヒエラルキーを感じないように切り替えていくのです。そうすれば、相手は最小限のヒエラルキーしか感じないようになるでしょう。しかし、これをできるような人はごく少数派のような気がします(確かに、このように器用な方は存在しています)。トレーニングしたところで、ある程度の人数を超え始めると限界を迎えるでしょう。そういう意味では、現実的ではありません。

二つ目は、相手にあらかじめ伝えてしまう事です。「ヒエラルキーを感じないでほしい」と相手に伝えることによって、相手にヒエラルキーを感じないでもらおうと言う考え方です。しかし、ここまでの文章を読んでくださった方はお気づきかもしれませんが、「ヒエラルキーを感じないでほしい」と伝えたところで相手がそれをどう受け止めてどう考えるかによります。本当に心から「よし!ヒエラルキーを感じないようにしよう」と心に決めて対等な関係を持てるのはごく少数でしょう。よって、この方法も現実的ではありません。

三つ目は、「人は何故ヒエラルキーを感じるのか?」のメタ的な答えにアプローチしていく方法です。これであれば、もしかすると数少ない方法でほぼ全員を網羅できるかもしれません。しかし、「人は何故ヒエラルキーを感じるのか?」の答えを見つけ出さなければなりません。この答さえわかれば、他者にヒエラルキーを感じさせずに関係を維持できます。かなり崇高な答えなような気がしますが、これに答えはあるのでしょうか?

精神的な距離がヒエラルキーの原因

実は答えは単純で身近なところにあります。人との距離感です。分かりやすく物理的な距離で説明します。あなたは公園の広い広場に居ます。視界を妨げるものは何もありません。1km先に全く知らない人と向かい合って立っています。この人にヒエラルキーを感じるでしょうか?おそらく、ほとんどの人がヒエラルキーを感じないでしょう。

次に距離が変わります。距離は10mになりました。10mともなると、気にしだす人もいるかもしれません。相手を気にすると言う事は、関係性が発生したと言う事ができます。前出の様にヒエラルキーのない関係性は存在しません。よって、ヒエラルキーが発生してしまったと言う事です。

さらに近づけてみましょう。50cmではどうでしょう?この距離ともなると、相手を気にしないことはほぼ不可能となります。近すぎで不快感を感じる人もいるでしょう。物理的な距離で説明しましたが、ヒエラルキーにおいては相手がどう感じるかなので精神的な距離で考えます。

精神的な距離と言われても目に見えないですし、どのように考えれば良いのでしょうか?実は精神的な距離の多くは、コミュニケーションから発生します。つまり、ヒエラルキーを感じさせるか/感じさせないかはコミュニケーションの取り方なのです。

とある他社が自分のことについて、あれこれ言ったとします。例えば、「貯金はした方が良い」「あなたは原色系の服が絶対に合う」「髪型が…」「振る舞いが…」挙句の果てに「~が好きに違いない」「似合うと思って買ってきた」などされたらどうでしょう。精神的な距離が近いと感じませんか?友人や兄弟でも「ちょっと…」と思ってしまいそうです。

相手の人は無意識でしょうし、良かれと思ってやっていることかと思います。しかし、これは相手をヒエラルキー的に下位に押し込めようとしている発言や行動です。相手を自分が思っている「思考や見た目」に変えようとしているのです。このような発言を一般的にマウントと言います。

これに屈した人は、相手の配下に入ってしまうでしょう。これを跳ね除けた人は、相手が遠ざかっていくかもしれません。または、急に何も言わなくなり、自分の意思に従うようになるでしょう。つまり、ヒエラルキーが発生してしまったのです(遠ざかっていく場合であってもヒエラルキーは発生しています)。自分が相手にしてしまったことは無いでしょうか?冷静に考えてみてください。ここまで酷いことは無いにしても、「~した方が良いよ」とか「こっちの方が」など言ってしまったことは誰でもあるのではないでしょうか?

ヒエラルキーをできるだけ感じさせないコミュニケーション

では、ヒエラルキーを感じさせないコミュニケーションとはどのようなものなのでしょうか?「~した方が良い」と言われたときに、どのように感じましたか?何か、自分の領域に土足で乗り込んできた感じを受けませんか?つまり、そういう事なんです。

ヒエラルキーを感じるコミュニケーションは、相手の決定権を奪うような意味が含まれています。これを、受け入れるか/受け入れないかで、決定権を相手に渡すか/自分で持つかが決まるのです。相手に決定権を渡してしまうと、相手より下位になります。言い方は悪いですが奴隷となったわけです。

つまり、ヒエラルキーを感じさせないためには、「相手の決定権を奪わない」ことと「自分の決定権を奪わせない」ことが重要になってきます。コツは簡単です、ちゃんと主語を使って会話するのです。

自分から相手に伝えるときは、「私は~と思う」「私なら~とする」の様に、「私は」をちゃんと使って会話します。これによって、相手は参考意見や選択肢の一つとして捉えることができ、決定権は相手に残ったままになります。これを「I(アイ)メッセージ」と言います。

逆に相手から「~した方が良い」などと言われる場合があります。相手に決定権を渡さずに、相手の心象を悪くしたくない場合は、「Youメッセージ」を使用します。具体的には「あなたは~と思ったんだね」「あなたなら~とするんだね」と言った言い方をします。これならば、相手の意見として尊重しながらも、決定権は自分のままです。

この二つを実践することが大切になります。が、あと一つだけポイントを伝えるとすれば、すでに出来上がったヒエラルキーに怖気づかないように勇気を持つこと、油断しないようにすることです。心理的にヒエラルキーが上位や下位だと感じている相手に、IメッセージとYouメッセージを使えればフラットな関係が構築できたも同然です。

最も有効は場面は子育て

フラットな関係は互いの成長を促進すると言われています。お互いに忌憚のない意見を伝えることができるからです。私から是非このコミュニケーション手法を使用してほしい場面があります。それは、子育てです。

子育てにおける親子関係にヒエラルキーはつきものです。「ああしなさい」「こうしなさい」と、子供が知らないことを前提に次々と指示を出してしまいます。これによって自立心が育ちづらくなるります。この、親の束縛ともいえる殻を打ち破る子供の行為が「反抗期」です。

昔は「反抗期」と言うのは成長の過程で必ずあるものと定義されていましたが、最近では少し状況が変わってきています。「反抗期」とは子供が親から自立する手段の一つで、そもそも自立的に行動できている子供に反抗期は無いと言うのです。

自立とは「決定を自ら下してその決定に自らが責任を負う」事を言います。決定権をやり取りしない「Iメッセージ」や「Youメッセージ」は、子供の自立を促す一つの手法と言っても過言ではありません。子供がもう大人と言う方も、まだ遅くありませんぜひ実践していただければと思います。

まとめ

今回は、フラットな関係の定義と、フラットな関係を築くための手法について説明してきました。仕事での関係はもちろん、子育ての場面でぜひ使ってほしいことも伝えました。

この記事を読んだ方は、フラットな関係が良い関係だと思って読んでられる方が多いかと思います。しかし、フラットな関係が一番良い関係とは限りません。なぜなら、相手がヒエラルキーを望んでいる場合があるからです。

相手が自信が無く、誰かに決定してほしいと思っているかもしれません。相手がプライドが高く、だれもが自分の想い通りに動かないと気が済まないかもしれません。そういった人に「Iメッセージ」「Youメッセージ」を使用すると、それはそれで、相手は気分を損ねるかもしれません。

このような手法全般は、常に時と場所を選びます。上手に使って、良い人間関係を築いていった頂ければと思います。

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